「Trick Or Treat!」

ごく軽く、小さく、ドアをノックした。 
もちろん返事はない。 
眠っているはずだ。 
さっき仕事部屋を覗いてみたが、灯りが消えていた。  

静かにドアノブを回し、ぎりぎり身体が通れるくらいドアを開くと、するりと中へ滑り込む。 
息を潜めてあたりを見回すと、ベッドに彼が横たわっていた。 
ベッドサイドの明かりでぼんやりと身体が浮かび上がって見える。 
彼女は静かに近寄って行った。   
静かな寝息を立てて眠っている。 
小さな男の子みたいに。 
今は何も考えないで。 
恐ろしいことも、不幸なことも。 
優しい夢だけを見て。  

髪にそっと触れる。 
ボサボサの髪は、触ると本当は柔らかい。  

さあ起きないうちに始めましょう。  



ひとつ、ふたつ、みっつ。 
キャンディー、グミ、チョコレート。 
よっつ、いつつ、むっつ。  
キャラメル、クッキー、チューインガム。  

お腹がすいても困りませんように。 
たくさん食べられますように。 
悪戯しませんように。  

眠る彼の周りにはお菓子がいっぱい。  

目覚めて一番先に食べるのはどれかしら?  



お菓子を配り終えたら、そっと部屋を出ましょう。 
起こさないようにそっと。  



「おはようございます」 
見つかった。 
「これは何ですか?」 
「ハロウィーンのおまじない、です」 
「初めて聞きました」 
「悪戯されたくないから先に配ったの」 
「悪戯は好きなので貰ってもします」 
彼がベッドから降りてきた。だんだん近づいてくる。 
捕まった。 
「お菓子、1つ足りませんよ?」 
「たくさん配ったから―――  

それは突然で。 
不意打ちで。 
甘く、柔らかで。  

「ありました」 
可愛い笑顔で。

呆然としていると手をぐいぐい引っ張られて、ベッドの側へ。 
彼は端に腰かけると彼女を膝に抱き上げた。小さな女の子みたいに。 
「今日はハロウィーンですけど、もう1つの方はどうしました?まさか忘れてませんよね?」  

もちろん、もちろん。 
でもあなたは何でも持ってる。欲しいものなんてないでしょう?  

「朝までまだ時間がありますよ。肌寒いから一緒にぬくぬくしましょうか」  

夜明け前。  
まだまだ肌寒い。  
でも一緒だと暖かい。 

悪戯は、しないでね。  



Happy Birthday! & Happy Halloween!





Fin







★夜崎のコメント★
悪戯してくださいっ!!
あ、すみません、つい心の声が漏れました。
あああなんて甘い甘いひと時なんでしょう…
眠ってるLをお菓子の可愛いおまじないで優しく包んで
今だけは平和な時間であるよう祈りを込める。
口には出さなくても、Lには伝わっていることと思います。
Lはお菓子貰っても悪戯はしますよね!!
Lの大事な大事な「甘いお菓子」
明るくなるまで、ふたりきりで食べさせあってほしいです。
この度は、誕生日にふさわしいロマンティックな作品をありがとうございました!






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